夜のビジネスホテルの部屋で、小さな机に向かって座り、コンビニの袋とおにぎりを前にスマートフォンを見ているボス。「110キロの男が15キロ痩せられたのは、AIのおかげではなかった——48歳・運動なし/1年分の記録」

110キロの男が15キロ痩せられたのは、AIのおかげではなかった【48歳・運動なし】

運動しないダイエット
目次
  1. 賭けは、僕から持ちかけた
  2. やり方は、あすけんの有料版とAI
  3. 出張中は、目標のペースにほぼ乗っていた
  4. 12月10日、家に帰った
  5. 2月、賭けの相手のほうから降りた
  6. 寿司がなくなってから、増える側に変わった
  7. 3つの時期を並べたら、答えが出ていた
  8. だから今年は、向こうから来る相手にした
  9. 今年の出張も、12月10日で終わる

去年、僕の体重は110.7キロありました。運動はしていません。今もしていません。

その状態から、15キロ痩せました。ただ、先に言っておくと、これは成功談ではありません。目標には届かず、いまは98キロ台です。

「AIで痩せた話」でもありません。AIは去年から使っていました。それでも途中で止まりました。何が効いていて、何が効いていなかったのか。当時の結果を引っ張り出して、見返しながら書きます。

賭けは、僕から持ちかけた

始まりは、会社の人との賭けでした。期間は5月1日から翌年の4月30日までの1年。目標体重は84.4キロで、110.7キロからなので26.3キロ減らすことになります。ペースにすると、週に500グラムずつです。

届かなかったら、僕が寿司をおごる。届いたら、おごってもらう。そういう約束です。

勝ちたかったわけではありません。ひとりだと絶対に続かないので、続けるための仕掛けとして、僕のほうから賭けに乗ってもらいました。会社の人は、それに付き合ってくれました。

賭けの条件をまとめた図。左に110.7キロから挑戦するボス。右に4つの条件。期間は1年(5月1日から翌4月30日)、目標体重は84.4キロで26.3キロ減らす、必要なペースは週マイナス500グラム、賭けたものは寿司で届かなければ自分がおごる。下の帯に、相手は会社の人で、付き合ってくれただけで言い出したのは自分のほう、と書かれている

やり方は、あすけんの有料版とAI

記録には、あすけんの有料版を使いました。課金して、毎日食べたものを入れる。そこで出た1日の上限が、1,800キロカロリーでした。

PFC(タンパク質・脂質・炭水化物の配分)も毎日見ていました。とくに脂質は数字が超えないように、食べるものを選んでいました。

そして、ここが今回の話の肝なのですが、去年の時点でAIを使っていました。聞く相手は主にGeminiで、ChatGPTにも聞いていました。晩ごはんの前に、こういう文を自分で打ち込みます。

「晩ご飯で食べられる摂取カロリーは何キロカロリーですか。残りのPFCは何グラムと何グラムと何グラムですか。これからコンビニで買い物するんだけど、何を買ったらいい? この中に収まりますか?」

記録するアプリがあって、数字を計算してくれるAIがいる。道具だけ見れば、いまとほとんど同じです。

去年使っていた道具の図。記録するのはあすけんの有料版で、課金して毎日入力、1日の上限は1,800キロカロリー、PFCも毎日見ていた。計算してもらう相手はGeminiとChatGPTで、晩ごはんの前に自分で文を打ち込んで聞いていた。その下にスマートフォンの絵と、実際に打ち込んでいた質問文。いちばん下の帯に「記録するアプリがあって、数字を計算してくれるAIがいる。それでも、途中で止まりました」と書かれている

出張中は、目標のペースにほぼ乗っていた

賭けを始めた12日後、5月13日から出張に入りました。そこからはホテル泊の毎日です。数えてもらったら、賭けの始まりから12月6日までの219日のうち、207日が出張でした。

ホテル暮らしには、はっきりした特徴がありました。一度部屋に入ってしまえば、買ってきたものしか食べません。夜に何か食べたくなっても、わざわざ外まで買いに行かない。なんせ運動が嫌いなので、その一歩が面倒なんです。だから空腹でも我慢できました。

我慢できたのは、意志が強かったからではありません。買いに行くのが面倒だったからです。運動が嫌いという性格が、ここでだけは痩せる方向に働きました。

体重は落ちました。見返したら、12月6日に95.7キロ。始まりから15.0キロ減です。この間のペースを計算してもらったら、1週あたりマイナス479グラムでした。目標の500グラムに、ほぼ届いていました。

12月10日、家に帰った

出張が終わったのは12月10日でした。15キロ減に届いた、4日後です。

左はビジネスホテルの部屋の夜。机に向かって座り、コンビニの袋とおにぎりだけを前にスマートフォンを見ているボス。右は自宅のキッチンの夜。開いた冷蔵庫の前に立ち、小さなスナックの袋を手に持って「まあこれくらいなら」という顔をしているボス。同じ人が、置かれた場所によって行動が変わったことを表した対比の絵

家に帰ってからも、気をつけてはいたんです。何か食べたくなったら、ポップコーンならいいか、低カロリーのものならいいか、と、なるべくカロリーの低いものを選んで食べていました。

ただ、その積み重ねが100キロカロリー、200キロカロリーになっていきました。ホテルなら「買いに行くのが面倒」で発生しなかった分です。順調にちょっとずつ減っていた体重が、横ばいになりました。

見返したら、12月6日の95.7キロから、1月10日の95.2キロまで、5週間で0.5キロしか減っていませんでした。計算してもらったら、1週あたりマイナス100グラム。目標のペースなら、同じ5週間で2.5キロ減っているはずでした。

だらしなく食べて戻したのではありません。選んで食べて、それでも止まりました。

家に帰った5週間を比べた図。計画では週500グラムずつなのでマイナス2.5キロ減っているはずだったが、実際は95.7キロから95.2キロでマイナス0.5キロ、1週あたりマイナス100グラムのほぼ横ばい。下に困った顔のボスと、ホテルなら「買いに行くのが面倒」で発生しなかった分だという説明。いちばん下の帯に「この遅れを取り返そうとしたことが、このあと全部につながります」と書かれている

2月、賭けの相手のほうから降りた

横ばいのぶん、計算が合わなくなっていました。もともと、週500グラムずつでちょうど届く計画です。横ばいだった5週間の遅れを、どこかで取り返さないと、期限の4月30日までに84.4キロには届きません。

だから、強引に食べるものを減らしにいきました。決めていた1,800キロカロリーを守るのではなく、そこからさらに下へ。最後のほうは、絶食するつもりくらいでやろうとしていました。

見返したら、2月14日は96.2キロで、横ばいどころか1月10日より増えていました。そこから2月21日までの1週間で、2.7キロ減って93.5キロ。始まりから17.2キロ減で、一番軽かった日です。計算してもらったら、目標の週500グラムの5倍以上の落ち方でした。

その週に、会社の人が降りました。僕が食事制限を無理に押し進めるのを心配して、「もう負けでいいから、その無理なダイエットはやめよう」と言ってくれました。

寿司は、おごっていません。おごってもらってもいません。賭けはそこで、そのまま消えました。期限よりずっと手前、一番痩せていた週に、賭けだけが先に終わった形です。

2月に起きたことを順に並べた図。2月14日は96.2キロで1月より増えており、遅れを取り返そうと決めた1,800キロカロリーより下へ絞りにいった。2月21日は1週間で2.7キロ減って93.5キロ、始まりから17.2キロ減で一番軽かった日、目標の週500グラムの5倍以上の落ち方。その週に会社の人が降り、「もう負けでいいから、その無理なダイエットはやめよう」と言ってくれた。下に青ざめた顔のボスと、寿司はおごってもいないしおごってもらってもいない、賭けはそこでそのまま消えた、と書かれている

寿司がなくなってから、増える側に変わった

そこからの数字は、はっきりしていました。計算してもらったら、2月21日から後は1週あたりプラス350グラム。減るのが遅くなったのではなく、増える側に変わっていました。

なぜ増えたのか。僕は、リバウンドだったと思っています。

ただ、原因は1,800キロカロリーという枠のほうではありません。1日1,800キロカロリーで週500グラムずつ、というのはゆっくり落とすやり方で、実際にうまくいっていました。僕の体重なら、これは適正なやり方だったと今も思っています。

リバウンドしたと思う時期は、その枠よりさらに下まで、自分で絞り込んでいました。1,500とか1,400とか、そのくらいまで落ちていた日が続いていたんだと思います。当時の食事の記録は手元にないので、はっきりした数字は分かりません。体の仕組みの話も、当時も今も分かっていません。あくまで、僕の場合はそうだったという見方です。

リバウンドの見立てをまとめた図。2月21日から後は1週あたりプラス350グラムで、減るのが遅くなったのではなく増える側に変わっていた。左に決めていた枠の1日1,800キロカロリー(週500グラムずつのゆっくり落とすやり方で、実際にうまくいっていた。僕の体重なら適正なやり方だったと今も思っている)、右にその枠よりさらに下の1,500とか1,400とか(そのくらいまで落ちていた日が続いていたんだと思う。自分で絞り込んでいた)。いちばん下に困った顔のボスと「分かっていないこと」として、当時の食事の記録は手元にないのではっきりした数字は分からない、体の仕組みの話も当時も今も分かっていない、あくまで僕の場合はそうだったという見方です、と書かれている

そう考えると、会社の人が賭けを降りたことと、体重が増えたことは、同じところにつながっています。心配されたのは、その絞りすぎでした。止めてくれたのは、正しかったんだと思います。

見返したら、記録の最終日は4月18日で96.3キロ。14.4キロ減で、目標の84.4キロには11.9キロ届いていませんでした。

1年分の体重の折れ線グラフ。オレンジの太い線が実際の体重で、5月の107.1キロから下がり、11月の96.3キロあたりで横ばいになり、最後は96.3キロで終わっている。灰色の点線が週500グラムずつ減らす目標ラインで、84.4キロまで下がり続ける。10月までは実際の体重のほうが目標より下にいたが、11月で目標の線に追い越されている

ただ、この時期が全部だめだったわけでもありません。3月に受けた人間ドックでは、保健師さんにめちゃくちゃ褒められて、すごく気持ちよくなった記憶があります。目標には届いていなくても、始めたころとはだいぶ違う体ではあったので。26.3キロというすごい目標に対しての結果でしたが、振り返ってみたら、15キロは結構頑張ったほうじゃないかなと今は思っています。

3つの時期を並べたら、答えが出ていた

今回、当時の結果を見返して、期間を3つに分けて計算してもらいました。

時期 家の環境 賭け 体重 1週あたり
(1) 出張中(31.3週) 無い あり 110.7 → 95.7キロ -479g
(2) 家に帰ってから(11.0週) ある あり 95.7 → 93.5キロ -200g
(3) 賭けが終わってから(8.0週) ある 無い 93.5 → 96.3キロ +350g

1年を3つの時期に分けた図解。(1)出張中は家の食べ物に手が届かず、寿司の賭けがあり、1週あたりマイナス479グラム。(2)家に帰ってからは食べ物に手が届き、賭けはあり、1週あたりマイナス200グラム。(3)寿司がなくなってからは食べ物に手が届き、賭けはなく、1週あたりプラス350グラム。まとめとして、あすけんもGeminiもChatGPTも3つの時期のあいだ一度も変わっていない、と書かれている

環境が消えたら、ペースが半分以下になりました。寿司もなくなったら、増える側に変わりました。

そして、あすけんもGeminiもChatGPTも、3つの時期のあいだずっと同じように使っていました。道具は一度も変わっていません。だから僕の場合、15キロ痩せられたのはAIのおかげではなかった、と言えます。

効いていたのは、買いに行くのが面倒なホテルという環境と、人と続けている賭け。どちらか片方ではなく、両方要ったんです。片方が消えたら半分になり、両方消えたら逆に動いたので。

ただ、数字を見返して、もうひとつ思ったことがあります。止まった原因は、計画のほうではなかった、ということです。1,800キロカロリーで週500グラムという設計は、僕の場合はうまくいっていました。続かなくなったのは、横ばいで計算が合わなくなって、決めた枠より下へ自分で絞っていったからです。計画からはみ出したのは、僕のほうでした。

そして、その横ばいは、家に帰って環境が変わってから始まっています。環境が変わって、横ばいになって、計算が合わなくなって、無理をして、止められて、増えて終わった。去年の1年は、全部この順番でつながっていました。

起きた順に6つ並べた図解。1、12月10日に出張が終わって家に帰った。2、減り方が横ばいになった。3、期限までの計算が合わなくなった。4、決めた1,800キロカロリーの枠より下へ自分で絞った。5、相手が心配して賭けを降りた。6、増える側に変わって終わった。まとめとして、続かなくなったのは決めた枠より下へ自分で絞っていったからで、計画からはみ出したのは僕のほうでした、と書かれている

だから今年は、向こうから来る相手にした

夜のビジネスホテルの部屋。机に立てかけたスマートフォンの画面から、トレーナー姿の長毛の猫ミルさんが身を乗り出して、机の上のおにぎりを前足で指している。ボスは椅子に座って、驚いた顔で少しのけぞっている。今年は向こうから指示が来る、という関係の逆転を表した絵

今年もダイエットをしています。相手はGeminiでもChatGPTでもなく、ミルさん。パソコンとスマホのAIに、昔飼っていた猫の名前をつけたコーチです。

去年は、残りのカロリーとPFCを自分で打ち込んで、自分から聞きに行っていました。聞きに行かない日は、何も起きません。今年は、食事の写真を送れば、計算も指示も向こうから返ってきます。

言われている数字も真逆です。去年は1日1,800キロカロリーに抑えていました。今年、始めたころにミルさんから出た目標は1日2,618キロカロリーで、同じ人間が、1年で正反対のことを言われています。

ただ、どちらも「その時の僕に出た数字」です。去年の1,800は、当時の僕の体重で、あすけんが出したものでした。

今年の目標も、固定ではありません。連載の記録を見返したら、2,618だった数字が2,647になり、2,654になっていました。

なぜ変わるのか。ここは珍しく分かります。この計算のしかたは、僕が自分でダイエットアプリに入れたものだからです。参考にしているダイエットトレーナーの人が出しているやり方で、体重から計算するので、体重が変われば数字も変わります。

目標カロリーがなぜ変わるのかを説明した図。見出しは「なぜ変わるのか。ここは珍しく分かります」、副題は「ただ、どちらも『その時の僕に出た数字』です」。去年は1日1,800キロカロリーで、当時の僕の体重であすけんが出したもの。今年の目標も固定ではなく、連載の記録を見返したら2,618から2,647、2,654と動いていた。理由として、この計算のしかたは僕が自分でダイエットアプリに入れたもので、参考にしているダイエットトレーナーの人が出しているやり方、体重から計算するので体重が変われば数字も変わる、と書かれている

パソコンのことは分かっていない僕ですが、これだけは分かっています。

体重や条件が変われば、必要な量も変わっていくはずです。だから、誰にでも当てはまる数字ではないと思っています。

絞りすぎてリバウンドしたと思っている僕が、今度は「もっと食べろ」と言ってくる相手を試している。去年の失敗が、そのまま今年のやり方を選んだ理由です。どちらが正しいのかは、正直まだ分かっていません。

去年と今年を左右に並べた図。去年はスマートフォンに向かって指差すボスで、自分から聞きに行く向き、聞かない日は何も起きない、言われた量は1日1,800キロカロリーで抑える側。今年は驚いた顔のボスの横にスマートフォンがあり、向こうから来る向き、写真を送れば計算も指示も返ってくる、言われた量は1日2,618キロカロリーで「もっと食べろ」の側。下の帯に、絞りすぎてリバウンドしたと思っている自分が今度は「もっと食べろ」と言ってくる相手を試している、どちらが正しいのかはまだ分からない、と書かれている

今年の出張も、12月10日で終わる

いま、僕はまた出張中です。ホテル泊の毎日で、去年ペースが出ていたのと同じ環境です。

この出張は、12月10日で終わります。去年、家に帰ったのと同じ日付です。

去年はそこからペースが半分以下になり、寿司がなくなって、増える側に変わりました。今年は賭けの代わりに、毎日向こうから来るミルさんがいます。同じ日付から先がどうなるかは、僕にも分かりません。

その記録は、連載として書いています。ミルさんがどういうコーチなのかは、第1話から読めます。

【ダイエット】第1話: ダイエットアプリを作ってたら、いつのまにかAIが専属トレーナーになっていた話